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定期的に三愛経営労務管理センターから発信している情報です

2014年 臨時号

社会保険労務士連合会発行の機関紙「月刊社労士」に投稿した文章が11月号に掲載されました。以下でそれを紹介します。

アルバイト・パート労働者の標準報酬月額の変更における問題点

 アルバイトやパートなど時給計算で働く労働者(以下、パートタイマー)は、1つの基準として、1日または1週間の所定労働時間、もしくは1か月の所定労働日数が、正社員のおおむね4分の3以上の場合、健康保険及び厚生年金保険の被保険者とすべきとされています。 これにならい、パートタイマーを社会保険に加入させても、月々の給与の額が正社員より変動するにもかかわらず、保険料額の変更が容易でないため結果的に保険料負担が大きくなり、加入を拒むパートタイマーや、社会保険から抜けたいと申し出るパートタイマーが少なからずいます。 これは、社会保険の問題点であると思い、ここに提起したい。

 ご存知の通り、標準報酬月額の決定・改定方法は、4種類あり、資格取得時決定、定時決定、随時改定、育児終了時改定です。

 まず、問題となるのは、随時改定です。固定的賃金の変動があってから3ヶ月経過後、いずれの月も支払基礎日数が17日以上で、2等級以上の差がある場合に、標準報酬月額が改定されます。 昇(降)給があってから、4か月後の保険料から変更になり、実際に給与に反映されるのは5か月後であり、とても機動的な制度とは言い難いですが、パートタイマーに当てはめた場合には問題はより深刻です。 固定的賃金の変動は、パートタイマーのような時給計算の場合、時給単価が変わったときが対象となり、労働時間や労働日数が少ないため、月々の給与の額が下がった場合は含まれません。 また、仮に時給単価が変更になったとしても、月々17日以上の出勤していなければならず、実際の運用では、随時改定で標準報酬月額を上げることはできても、標準報酬月額を下げることは、ほぼ不可能と言ってよい状況にあります。

 そうであるならば、定時決定で変更すればよいと思われるかもしれませんが、パートタイマーにとってはそれも高いハードルです。 定時決定は、3ヶ月(4月・5月・6月)の支払基礎日数が15日以上ある月が1か月以上ないと定時決定の対象とならず、それに満たない場合は従前の報酬月額で決定されてしまいます。

 仮に現在の標準報酬月額が15万円のパートタイマーがいたとします。4月〜6月の支払基礎日数がそれぞれ15日で、給与が11万円とすると、定時決定で標準報酬月額は11万円となります(表の上段)。 その一方で、支払基礎日数が15日の月が1か月だけあり、その月が15万円だとすると、標準報酬月額は15万円となります(表の中段)。 この例では表の通り、4月〜6月の給与の合計額が同額でも標準報酬月額はそれぞれ11万円と15万円で4等級もの差が生じてしまいます。 また、いずれの月も支払基礎日数が15日以上の月がない場合は、たとえ3ヶ月の平均の給与が8万円と低額になった場合でも、定時決定の対象とならず、標準報酬月額は従前の15万円で決定されてしまいます(表の下段)。

 このように、給与の額がほぼ同額なのに標準報酬月額にかなりの差があったり、給与の額の低いほうが標準報酬月額が高いという逆転した状況が生まれ、実質的にそれを解消する手段がないという状態が続いてしまいます。

従前の
標準報酬月額
4月給与
支払基礎日数
5月給与
支払基礎日数
6月給与
支払基礎日数
給与合計 給与平均 定時決定の対象になるか 新標準報酬月額
15万 11万
(15日)
11万
(15日)
11万
(15日)
33万 11万 なる 11万
15万 9万
(13日)
9万
(13日)
15万
(20日)
33万 11万 なる 11万
15万 8万
(12日)
8万
(12日)
8万
(12日)
24万 8万 ならない 15万

もともと、標準報酬月額の決定は、月々の給与の額がほぼ一定である正社員である労働者を念頭においた制度設計であり、パートタイマーにこの制度を無理やり当てはめて運用していることに原因があるように思われます。

 このような矛盾した状態が現出しないように、パートタイマーの社会保険料については、固定的賃金の変動という要件にとらわれず、時給単価の変更がなくても月々の給与の額に変化があれば随時改定の対象とし、3ヶ月とも支払基礎日数が17日以上という要件を緩和するといったことが1つの方法として考えられるのではないでしょうか。

 また、平成28年10月より、社会保険の適用が拡大されることになり、約25万人のパートタイマーが社会保険に加入することが見込まれています。よって、今後このような事例が増えていくことが予想されるので、早急な対策を講じる必要性があると思われます。

以上

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