懲戒解雇でも、労働基準法に定められている手続が必要です。「労働者の責に帰すべき事由」として解雇予告及び解雇予告手当の支払をしないで、即時解雇する場合には、事前(労働者には自宅待機等を講ずる)に労働基準監督署長の認定を受けなければなりません。
この労働基準監督署長の認定は、解雇予告が免除されるかどうかを判断したものであり、その解雇が有効であると認定されるものではありません。一方、「労働者の責に帰すべき事由」について、行政解釈としては、例えば、
@窃盗、横領、傷害などの刑法上の犯罪を犯したとき、
A賭博や風紀を乱して他の労働者に悪影響を及ぼしたとき、
B重大な経歴詐称があったとき、
C2週間以上無断欠勤したとき、
D出勤不良で何度注意しても改めなかったとき、となっており、30日前の解雇予告によって保護する必要もない程度に重大悪質な義務違反に限られるとされています。
判例によると、懲戒解雇が有効なためには、次の要件が必要であるとされています。
@懲戒処分の事由(事柄)と懲戒処分の種類が就業規則に明確に定められていること。
A懲戒規定の内容が会社の円滑な運営上必要かつ合理的であること。
B規定に該当する懲戒事由(事実)が存在すること。
C規律違反の種類・程度その他の事情に照らして他の同僚や過去の例と比べても平等な取扱いであること。
D規律違反の種類・程度その他の事情に照らして懲戒解雇されてもやむを得ず相当であること。
E解雇に至るまでに本人に弁明の機会を与える、労働組合と協議する、懲戒委員会を開催して慎重に検討するなどの適正な手続を経ていること。
F過去に既に懲戒処分の対象とされた事由(事柄)について重ねて懲戒処分したものではないこと(一事不再理の原則)。 |