2008年 春季号
― 雇用面の変化として、平成7年「日本経済の再活性化と経営者、労使の課
題」(日経連・労働問題研究会)において、長期雇用を基本としながら、企業
と働く人のニーズに応じた多様な雇用形態の人材を活用するシステムを確立
して以来、パートタイム労働者・期間従業員・派遣社員の活用を広げてきま
した。しかし、今日、「非正規雇用」・「派遣」・「日雇い派遣」・「偽装請負」が
「ワーキングプア」や「ネットカフェ難民」を発生させ、「格差と貧困」の原
因とされています。2007年は、この雇用形態に対する「反転」の兆しが
見え始めました。
◇三井住友銀行/派遣社員2000名を正社員化
2007年12月、グループの人材派遣会社から迎えていた派遣社員約200
0名を正社員として雇用すると発表した。本年7月から実施。正社員化される
派遣社員は新設する「ビジネスキャリア職」になり、主に事務職を担当する。
現在の一般職は廃止し、ビジネスキャリア職や地域限定の個人向け営業社員
ある「コンシューマーサービス(CS)職」のいずれかを選択できる。この結
果、同行の正社員は幹部候補の「総合職」とCS職とビジネスキャリア職の3
種類になる。CS職やビジネスキャリア職からも能力次第では幹部職社員にな
ることもできるという。
◇偽装請負が告発されるケースが多発し、各労働局が是正指導に動き、企業は
直接雇用を始める。<2007年度>
○クボタ(大阪/2月)/大阪労働局から偽装請負を指摘され、約千人を直接雇用すると表明。
○キャノン(東京/3月)/偽装請負で各労働局から是正さ
れ、3千5百人を正社員などに直接雇用すると表明。宇都宮事業所の偽装請負
を告発した組合員らを83人を10月から直接雇用(8月)。
○光洋シーリングテクノ(徳島)/請負社員ら16人を7月から直接雇用し、契約社員は計6
9人となる(5月)。偽装請負の告発で直接雇用された契約社員のうち、14名が正社員化。
○コマツ(大阪/9月)/大阪工場で出向偽装の是正指導を受け、請負社員120名を直接雇用。
◇労働者派遣業界大手に業務改善命令や業務停止命令がだされる。/日雇い派遣や登録型派遣に逆風強まる。
○日雇い派遣業界・大手のフルキャスト(東京都渋谷区)/昨年8月、違法な
港湾荷役業務への派遣で、全事業所が1ヶ月(一部2ヶ月)の事業停止命令
を受けている。
○日雇い派遣業界大手・グットウィル(東京都港区/登録ス
タッフ延べ290万人/顧客数7万社)/昨年7月、契約上の会社を通じて
別の会社に労働者を送り込むという違法な二重派遣の状態で、さらに労働者
派遣法で禁じられている港湾荷役業務を労働者に従事させる。よって、昨年
12月、厚生労働省は禁じられている港湾荷役への違法な派遣などで、法令
違反が複数確認し、約800ヶ所の全事業所に対して、事業停止命令を出す
方針を固めた。事業停止期間も数ヶ月と、大手派遣会社への処分で最長とな
る可能性がある。
○佐川急便子会社(佐川グローバルロジスティク/東京都
品川区)が違法な二重派遣を行ったとして、厚生労働省は本年1月7日、労働者派遣法に基づく事業改善命令を出す方針。静岡県内で、日雇い派遣大手グ
ットウィルから派遣された労働者、延べ1万人をさらに別の会社に送り込んで
働かせていた。
◇パートタイム労働者が通常労働者への転換を促進。(パートタイム労働法/
平成19年6月1日公布)
― パートタイム労働者のなかには、就職氷河期に直面しフリーターになった人や中途採用枠がなくパートタイム労働者になった人が多数存在します。一度パートタイム労働者として雇用されると、そこから正社員として就職することが難しい現状がみられます。そこで、事業主に対し、正社員への転換を推進するため、現在雇用しているパートタイム労働者に対して、次のいずれかの措置を講ずるように義務付けました。(12条)
- 社外から正社員の募集をする場合は、その募集内容をパートタイム労働者にも周知する。
- 正社員のポストを社内から公募する場合は、希望するパートタイム労働者に対しても、そのポストに就くことを申し出でる機会を与える。
- 正社員への転換のため試験制度を設ける。
- その他これらに準じた転換を推進するための措置を講じる。
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