2007年 夏季号
◇賃金制度が多様化しています。各賃金制度のネライやメリット並びに問題点
を整理しましたので、ご参照ください。
― 総合給/資格給/職能給/役割給/職務給/職種給/業績給/年俸制/コミッション給 ―
<総合給>/会社の規模や業種にかかわりなく、広く採用されている
○社員一人ひとりについて、年齢、勤続年数、学歴、仕事の種類、職務遂行能力、成績、職責、職場環境などを総合的に評価し、月額給与を決定する方式
○メリット/評価項目を総合的に検討して給与を決定できる/自由に柔軟に対応できる
○問題点/決め方が不透明で分かりにくい/年功で決めがち/職務遂行能力や勤務成績が十分に反映されない
<資格給>
○職務遂行能力は、社員によって異なる。職務遂行能力のレベルに応じて1級
2級、3級・・・・というように10前後の数の資格等級を設け、その資格等
級ごとに定額で給与(基本給)を決める方式。よって資格級表は10等級前後
のみの給与表。定期昇給がないため、上位の資格等級に昇格しない限り、昇給
はない
○メリット/職務遂行能力のレベルに応じて決めるので合理的である
/定期昇給がないので、コストの合理化を図れる/昇格しなければ昇給しない
ので、昇格意欲を刺激できる
○問題点/業務の習熟度の向上が給与に反映され
ない/社員の中高齢化に伴って上位の資格等に格付けされる社員が増加し、給
与負担が重くなる/上位に格付けされた社員が責任の軽い職務を担当すると、
給与の過払いが発生する
<職能給>
○資格等級に応じて給与を決める制度を職能給方式という。この資格等級制度
は職務遂行能力のレベルに応じて、1等級(高卒新卒)、2等級、・・8等級(部
長クラス)というようにいくつかの資格等級を設けたうえで、社員一人ひとり
について、職務遂行能力を評価し、いずれかの資格等級へ格付けする制度。
○メリット/職務遂行能力に応じて給与を支払う/能力主義人事ができる/
能力の向上に対する社員の意欲を刺激できる
○問題点/資格等級を合理的に
設定することは難しい/運用が年功的になりやすい/社員の中高齢化に伴っ
て、上位の資格等級社員が増加し、結果的に会社の給与負担が増加する
<役割給>/近年、役割給方式を導入する会社が増加している
○役割によって、難易度、求められる能力、責任の程度が異なるという事実を
踏まえ、役割ごとに給与を決定する仕組み/役割とは、会社において果たすべ
き任務である/係長の役割・課長の役割・部長の役割/役割基準表・基本給表
(役割給表)
○メリット/役割の重要度に応じて給与を決定するものであるか
ら、社員の勤労意欲の向上、会社に対する忠誠心の高揚につながる/社員の中
高齢化に伴って、給与水準が自動的に・機械的に上昇するのを妨げる/給与コ
ストの合理化を図れる
○問題点/役職者以外の社員の役割を合理的に決める
ことは難しい/役割相互間の給与格差の設定が容易ではない
<職務給>/この方式に切り替える会社が出てきています
○仕事の遂行の難易度および責任の重要性を総合的に・客観的に調査分析し、
整理したうえで、給与を決定する仕組みを職務給方式という/職務1級・遂行
がきわめて容易で、責任の程度が軽い職務(一般社員)、・・、職務6級・遂行
がきわめて困難で、責任がきわめて重い職務(部長)
○メリット/仕事の難易
度、重要度を給与に反映できる/社員の地位上昇意欲の動機付けを図れる/給
与コストの合理化を図れる/成果主義人事を構築できる○問題点/職務間の
給与格差の設定が難しい/職務の区分化が容易ではない/昇給の基準設定が
難しい
<職種給>
○仕事の種類(職種)ごとに、その仕事の責任の重さ、遂行の困難さ、要求さ
れる能力の内容などに応じて給与を決定する方式/営業職=200,000〜
300,000円、事務職=150,000〜250,000円、管理職=2
50,000〜450,000円
○メリット/仕事の難易度、責任の程度を給
与に反映できる/給与を一定の幅で設定することにより、能力の伸長度も給与
に反映できる/給与コストが無制限に増大することに歯止めをかけることが
できる
<業績給>
○社員一人ひとりについて、1年間の業務目標を明確にしたうえで、その目標
をどれだけ達成したかを評価し、その後1年間の給与(業績給)を決定する/
業績給は、資格等級別、評価別に絶対額で決める
○メリット/業績に応じた給
与を決定できる/業績への関心を高めることができる/成果主義人事制度を
構築できる/昇給コストを節減できる
○問題点/評価ごとの給与の設定が難
しい/業績次第では給与が大きくダウンするため、社員に不安を与える/個人
ごとに業務目標を明確に設定できない社員には、適用できない
<年俸制>
○年俸制は、賞与も含めた年間(半年間)の給与をあらかじめ決める方式/種
類としては、管理職年俸、管理職半期年俸、全社員年俸、全社員半期年俸があ
る/年俸の決め方は、「総合方式」と「積み上げ方式」の2つがある。「総合方
式」は、前年の仕事の成績、職務遂行能力、社内で果たすべき役割、さらには
会社の期待度などの要素を総合的に判断して決定する方式。「積み上げ方式」
は、月給に相当する部分(基本年俸)と、賞与に相当する部分(業績年俸)と
を積み上げて年俸を決定する方式
○メリット/業績評価を給与に反映させる
ことができる/実力主義、能力主義の賃金管理ができる/経営への参加意識を
高めることができる/社員の個別賃金管理ができる/比較的簡単な年収調整
ができる
○問題点/年俸決定のための評価基準の設定と運用が難しい/年俸
のダウンが容易ではない/管理職以外の社員の時間外労働、休日労働に対する
割増賃金の取扱いが難しい
<コミッション給>
○営業社員の活性化対策として、コミッション給制度(歩合給、出来高給)が
ある/売上高、契約件数、販売件数などで、営業の成績に応じて給与を支給す
る方式/給与の構成は@コミッションだけで構成Aコミッションのほか、固定
給、営業手当を支給するの2つがある
○メリット/個人の業績、成果に応じて
給与を支給できる/営業社員の活性化、意欲の向上が図れる/給与決定の仕組
みが透明である/給与コストの合理化が図れる
○問題点/営業成績の良し悪
しで、給与収入が変動するので不安を与える/社員相互の競争心を煽る結果、
職場の一体感・連帯感が形成されにくい/社員の人事異動、配置転換が困難
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