2006年 10月号
◇「成果主義の構造欠陥」(経済産業省の研究会報告)平成18年8月10日
「人材マネジメントに関する研究会」(座長=森島基博一橋大学院教授) /労働者の意欲低下/短期的成果追求と人材育成軽視/職場疲弊に警鐘
<報告書>
―1990年から現在までの「過去15年の成果主義は導入の契機がコスト削減にあった」とし、
人件費の抑制では、「効果を上げた」ものの、社員のモチベーションへのマイナスの影響や業績向上に
関しては「思うような効果が上がっていない」と厳しく結論づける。
―「予想していなかった問題点」として、@賃金などの処遇に対する納得感の低下
A個人競争激化によるチーム力の低下B短期成果に直結する目標への偏り・人材育成機能の低下
C現場の疲弊とプロセス(目標までの過程)管理の弱体化の四点を挙げる。
―「チーム内のメンバーでさえもライバルと見なして仕事」をしなければならず、
「個人間の競争意識は高まるものの、意欲が高まらない」と指摘。管理職同士も
「過多業務量の処理」と「個人間競争」に追われ、「優秀な部下の疲弊、他の
多くの部下に対する育成面での軽視」につながっていると分析。
―企業が「売上やコストなど目に見えない目標に偏る」結果、「マネジメント側が人材育成を軽視する
ことや、社員個々人がストレッチ(ワンランク上の仕事への挑戦等)を避けようとする事態」になっていることを懸念
―「目標管理制度」が実際には「結果管理制度」という形での誤解や逸脱が起こり、「部下が必要とする支援は十分に
行われず、インプットのない中でアウトプットばかりを要求される疲弊状況が職場に広がり、すでに長い時間を経過してきてる
のが現状である
<将来的・改善方向>
経営者はキャリアを通じて働く人の意欲を持続させ、「真の成果主義」と呼ぶべき、長期的な付加価値創造行動へと
結びつく新しい評価・賃金制度を構築しなければならない。
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